精神病性障害について

「精神病」は、妄想、幻覚、まとまりのない発語、ひどくまとまりのない、または緊張病性の行動などにより、現実を正しく認識する能力が著しく障害される疾患で、こうした症状を「精神病症状」、こうした特徴を「精神病性」といいます。現在は「精神病」という用語を単独で病名として用いることはほとんどなくなりましたが、形容詞的な「精神病症状」や「精神病性」という使い方はされます。そこから、「精神病症状」を主な特徴とする病態を「精神病性障害」と呼びます。
精神病性障害は以下の3つに大別されます。

  • 身体疾患に関連する精神病性障害
    (頭部外傷、脳血管障害、脳腫瘍、脳炎など、原因が中枢神経の障害による場合は器質性精神病性障害、それ以外は症状性精神病性障害と呼ばれる)
  • 精神作用物質の使用による精神性障害
    (精神作用物質としてはアルコール、大麻類、幻覚薬、吸入剤、コカインなどがあり、アルコール精神病、覚せい剤精神病などと呼ばれることもある。その他に医薬品が精神作用物質に該当する場合もある。)
  • 身体的基盤が明らかでない精神病性障害
    (原因となる身体疾患もなく、精神作用物質の使用によるものではない場合、症状やその持続期間に応じて、統合失調症、持続性妄想性障害、急性一過性精神病性障害、感応性妄想性障害、統合失調感情障害などが該当する)

今回のテーマである急性一過性精神病性障害は、身体的疾患や精神作用物質の使用を原因としない「身体的基盤が明らかでない精神性病障害」に属しています。

急性一過性精神病性障害の症状

急性一過性精神病性障害においては、妄想、幻覚、まとまりのない発語や行動、精神運動興奮から起こる錯乱状態、またはこれらの症状の組み合わせが、急激に発症します。通常、平常時から精神病的症状へ2週間以内に変化すること(2週間を越えない)とされています。
また、関連する急性ストレスの存在が指摘されます。大部分の人にとってストレスとみなされるような出来事、死別、配偶者を失うこと、職を不意に失うこと、結婚、戦争、テロおよび暴力による心理的外傷などと推定されます。ただし、長期間続く苦悩や困難は、急性一過性精神病性障害のストレス因子には含まれません。
なお、ほとんどの症状の持続期間はおおよそ1日~1カ月未満と短く、薬物治療により以前の機能レベルに回復するため、再発率は低くはないものの、予後はほとんどの方が良好といわれています。ただ、早急な回復が望めない方も稀に存在しますが、それを予見することは、現在のところ不可能なようです。

急性一過性精神病性障害の治療方法

統合失調症と同様に、抗精神病薬による薬物治療が主体となります。外来で治療可能な場合もあれば、短期の入院が必要な場合もあります。医師の判断により、薬物治療の効果が得られるまで精神科病院などでの療養が必要とされたら、入院治療に専念することが適切です。
さらに、入院治療や薬物治療だけではなく、医師や臨床心理士による精神療法によってストレスの原因を明らかにしたり、本人がストレス対処法などを習得していくことも大切です。