持続性抑うつ障害とは
持続性抑うつ障害は、うつ病(大うつ病性障害)の抑うつエピソード*ほどではない、うつ病に比べて軽い抑うつ症状が慢性的に2年以上持続する病気です。以前は気分変調症と呼ばれていたものに相当します。その特徴は、うつうつとした気分が一日中続き、そんな気分が無い日よりも多く、しかもこのような状態が長期化することです。
精神医学における「エピソード」では、「ある状態(病状)が続いている期間」を意味します。その症状とは、以下のうち2つ以上が当てはまるとされています。
- 食欲の変化(食欲の減退または増加)
- 睡眠の変化(不眠または過眠)
- 意欲の低下(気力の減退または疲労感)
- 自尊心の低下(自信の低下)
- 集中力の低下または決断困難(集中力低下・考えがまとまらない)
- 絶望感(悲観的・絶望感)
持続性抑うつ障害は一般人口の5~6%がかかると言われ、男女差は少ないですがやや女性に多く、症例の多くは若年で発症します。また、パニック障害を主体とする不安症や境界性パーソナリティ障害を合併しやすいともいわれており、薬物やアルコールなどの物質の使用障害を併発する危険性も含んでいます。さらに、一部はうつ病や双極性障害にいたる場合もあります。
また、若年で発症するにもかかわらず、治療ベースに乗るまで10年程度を要する場合が多いことも大きな問題とされています。
持続性抑うつ障害の治療
持続性抑うつ障害の場合は、気分の落ち込みが続いても日常生活はなんとか行える程度であることが多いため、病気だと気がつかず、性格の問題と捉えられたり、周囲の人から単なる「甘え」だと誤解されたりすることもあります。そのために医療機関を受診するのが遅れ、適切な治療を受けられないこともあります。
そのため薬物療法の対象ではないとされてきた時期もありましたが、近年は抗うつ薬に有効性を示した報告も多く、精神科における治療では一般的に抗うつ薬などの薬物療法が行われます。
持続性抑うつ障害の場合は、長年の経過を経ているため、無気力や無価値観を強めているので、薬物療法と併せて精神療法において本人の認知や考え方の修正などの治療が好ましいとされています。
持続性抑うつ障害と、うつ病の違い
持続性抑うつ障害とうつ病(大うつ病性障害)は重複する点もありますが、異なる点としては以下の2点です
持続性抑うつ障害は、比較的症状が軽い
比較的症状が軽いため、うつ病の診断基準にある症状が揃わない場合は持続性抑うつ障害と診断される場合もあります。
持続性抑うつ障害は、持続する期間が長い
うつ病は症状が2週間以上続くと診断されるのに対し、持続性抑うつ障害は症状が2年以上続くと診断されます。うつ病と診断された後、診断名が変わることもあります。
また、持続性抑うつ障害の方は常時落ち込んでいると訴えることが多く、うつ病では本人が訴えることが少ない、うつ病では症状が客観的なのに対して、持続性抑うつ障害では主観的な徴候が目立つといわれています。これらのことを踏まえ、医師は持続性抑うつ障害とうつ病の診断基準に照らし合わせながら総合的に判断します。
持続性抑うつ障害において注意すべき点
最も注意すべき点は、持続性抑うつ障害はうつ病の症状が軽いという誤解です。うつ病では調子が悪くなったという時期がおおまかに把握できていますが、持続性抑うつ障害の場合は、思春期前後に気づけば悪くなっていてそれが続いている、というような経過をたどることが多いようです。
たとえば、うつ病では家から出られず食事もとれないといった強い症状がみられますが、持続性抑うつ障害ではなんとか食事をとれたり、なんとか仕事を続けることができたりするので、無理を重ねて症状が慢性化する場合があります。持続性抑うつ障害は、症状そのものよりも、生きていく機能に大きな支障をきたしてしまう病気だと考えていただければと思います。