双極性障害は、うつ状態と躁状態を繰り返す病気

「双極性障害」は、以前は「躁うつ病」と言われていた病気で、ICD10(※世界保健機関 WHOが,国際的に統一した疾病,傷害および死因の統計分類の体系 )のなか「うつ病」と同じく「気分障害」に分類されています。「うつ病」ではよく眠れなかったり、憂うつな気分や倦怠感があるといった「うつ状態」だけが生じますが、「双極性障害」は気分が落ち込むうつ状態と対極的とも思われる気分が高揚する躁状態または軽躁状態が現われ、これらを繰り返す病気です。

双極性障害は2つのタイプがある

この双極性障害は、「双極性Ⅰ型障害」と「双極性Ⅱ型障害」に分けられます。

「双極性Ⅰ型障害」は、うつ状態と激しい躁状態が生じます。ここでいう躁状態とは、睡眠・休憩をとることなく動きまわったり、仕事の場面でパワフルに振る舞ったり、しゃべり続けて周囲の人を疲弊させたりするようなものです。支払い能力以上の買い物をしたり、社会的な逸脱行為が生じたりする場合もあります。

「双極性Ⅱ型障害」はⅠ型ほど極端な行為にいたることはありませんが、普段の本人とは別人のような積極性やハイテンションな言動が見受けられます。社会的な問題を引き起こしケースもあまりありません。このようにいうと、「双極性Ⅱ型障害」は「双極性Ⅰ型障害」よりも軽い病気のように思われがちですが、逆に薬でのコントロールがしにくく、うつ状態を再発しやすいという面もあるようです。いずれにせよ、病気の早期発見、早期治療が必要です。

双極性障害は早期発見が難しい場合もある

ところが、「双極性障害」の早期発見については難しいケースが少なくはありません。というのは、「双極性障害」の方の多くはうつ状態のときにどうも具合が悪い、心身の調子が思わしくない、自分はうつ病ではないか、と思って受診しますが、「双極性Ⅰ型」であれ「双極性Ⅱ型」であれ躁状態を発症して初めて「双極性障害」が疑われるのですから、「双極性障害」という診断が見逃されてしまう場合も少なくはないのではないかというわけです。

また、「双極性障害」では、最初のうつ状態もしくは躁状態から、しばらくは治まった期間があり、健常な状態が続く期間があります。しかし、この間もきちんとした服薬などの治療が行われることが必要で、服薬などを怠ると、また再発することが多くみられます。治療がなされないことにより、躁状態・うつ状態の間隔は短くなっていく傾向にあります。急速交代型へと移行していくと、治療自体も難しくなっていきます。

うつ病と双極性障害の薬物療法は全く異なる

治療法のなかの薬物療法については、別途お話ししたいと思いますが、うつ病の主な治療薬は抗うつ薬、「双極性障害」の気分安定薬と抗精神病薬が使用されますから、うつ病か「双極性障害」なのかの診断は、極めて重要であることは言うまでもありません。