精神科を受診する目安

大小さまざまなストレスで、元気がなくなったり、気持ちが落ち込んだりすることはごく普通の反応ですが、それらがきっかけで心のバランスをくずして気持ちが立て直せなくなることもあります。さらに、生活に支障が出るほど落ち込んだり、イライラや不安が2週間以上続いたりするような場合は、精神科や心療内科のある医療機関に相談・受診されたがよいと思います。

幻聴・幻覚や強迫的な行為が続くような場合もご相談ください。その他に、よく眠れない、食欲がでない、外に出るのが怖いなどの症状や、大きなストレスが思い当たらないのに、以前好きだったことがやりたくない、何をやるにも億劫になった、何をするにも意欲がなくなったという場合も相談のタイミングです。

初めての精神科受診

大学病院・総合病院の精神科や、精神科病院やクリニックを初めて受診する際は、予約制などですぐに受診できない場合もありますので、あらかじめ電話で予約していただくのが良いと思います。入院治療も考えるなら、病院がよいでしょう。

予約のお電話では簡単に現在の症状などをたずねられることもありますが、できるだけリラックスしてお話しされるとよいでしょう。お電話のご相談の際に紹介状や情報提供書の提供を依頼される場合もあります。これらはこれまでの治療を尊重し、今後の治療のために有用な情報として必要ですから、ご理解とご協力をお願いしたいと思います。

また、高齢者のご相談・受診については、施設関係者や事業者・ケアマネジャーの方に一任されるのではなく、ご家族の方が必ず同伴いただきたいと思います。

なお、初めての受診の際は健康保険証やお薬手帳、紹介状や情報提供書などが必要です。

医療機関以外の相談窓口

精神科に受診することが初めてで少しためらう気持ちがある時は、保健所の「こころの相談」窓口を利用されたらよいでしょう。無料で地域の精神科の医師が対応してくれます。

さて、精神的な不調の背景に経済的な問題や家庭内暴力のような問題が見受けられる場合もあります。これらのさまざまな問題については、まず行政機関などのしかるべき相談窓口へご相談いただくことも大切です。保健所では家庭内での暴力問題や発達障害についても相談に対応してくれます。

その他に法律的な問題で困った場合は法テラス、借金問題を抱えている場合は市区町村の多重債務の相談窓口を活用できます。

認知症や高齢者の精神的な不調については地域包括センターが相談窓口です。

また、勤労者の相談窓口としては、勤務先に保健師や産業医がいらっしゃらない場合には、地域の産業保健推進センターの相談を活用されるとよいでしょう。産業保健にかかわる専門職の方が相談に乗ってくれます。

病院の精神科、精神科の病院とクリニック

精神科医療にかかわる医療機関は大きく分けると以下のとおりで、それぞれに特徴があります。まず、病院とクリニックの違いは、入院施設を持っているか否かという点です。

一般的に、大学病院の精神科は精神科医の数が多く専門領域に精通した医師がいらっしゃいますので、複数の意見が診断に反映されたり、最新の検査や治療が受けたりできる場合もあります。多くの診療科がある総合病院の精神科は、精神疾患の他に身体的な疾患をお持ちの方が治療を受けやすいというメリットがあります。

また、精神科を主体とする精神科病院の多くは昭和30年代後半に設立されていますが、現在は改装や改築で設備・環境が改善されている病院が増えています。複数の医師の他に、精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー)・心理士・作業療法士などのスタッフが充実し、デイケア(リワーク含む)などの精神科リハビリテーションも充実しています。

受診が気軽にできる精神科クリニックは、その多くが交通に便利な所に開設されているようです。精神科医1名で診療しているケースがほとんどですが、小規模のデイケアを運営していたり、心理療法士のカウンセリングが受けられたりなど、クリニックごとの特徴があります。土曜日や平日の遅い時間まで診療をしているクリニックもあり、通院治療に便利です。

精神科と心療内科の違い

精神科と心療内科はどう違うのか、とよく問われますが、受診される側にとってはさほど大きな違いはないと思われます。最近は、精神疾患をメンタルの病気と呼ぶなど柔らかい表現が好まれるため、心療内科を併記している精神科クリニックも多いようです。

とはいえ、精神科と心療内科で異なる点をあげるならば専門分野の違いです。

精神科は、心の症状や病気を専門とし、心の病気そのものを治療します。例えば、強い不安、抑うつ、不眠、イライラ、幻覚、幻聴、妄想といった精神的な症状が強く現われる精神障害の治療を行ないます。ですから、統合失調症、うつ病、躁うつ病、双極性障害などの精神病圏内の疾患が主な対象となります。 さらに認知症なども対象です。

心療内科は、さまざまなストレスが原因で身体に症状が現れる場合に、その症状や病気を治療する科です。例えば、強い動悸が続く、下痢・腹痛、ぜんそく、血圧が高くなるといった症状があるにもかかわらず、検査をすると異常が無いと診断される、さらに同様の症状が続くといったような場合です。心療内科では、心が身体に影響を及ぼす心身症を主な対象としています。

精神科や心療内科以外では、神経内科という領域もありますが、こちらは、身体の動きがおかしい、ふるえる、しびれる、傾く、めまいがする、力が入らないなど、神経系の異常が疑われるときに受診されることをお勧めします。