不安障害とは

通常の生活の中で不安や心配を感じること自体は、危険や問題に対応するためのとても大切な感情です。しかし、いろいろな出来事や活動に対し過剰に不安や心配を感じ、眠れない、電車やバスに乗ることができない、さらに仕事に集中できなくてミスが多いなど日常生活や社会生活に支障が出てしまうようであれば、不安障害という精神疾患が疑われる場合もあります。
もし不安障害と診断された場合、ご家族や身近な人は、その方に対してどのように対応すればよいのでしょうか。不安障害は症状やタイプはさまざまですが、ここでは一般的な対処法を紹介します。

不安障害の方への接し方

ご家族の対応について

まずは話を聞く

家族や身近な人が心の病気になった場合に「気の持ちようで治る」「心が弱いから病気になる」「家族が精神科に通ったら恥ずかしい」などと思いがちです。心の病気(精神疾患)は身体の病気と同じように、専門医による治療を必要とすることを認識してください。
まず、ご家族の対応としては、本人の話を聞き、その不安や症状は非常につらいのだということに理解を示すことです。時間をかけて、じっくりと聞いてあげることが大切です。本人の話はつじつまが合わなかったり思い込みが強すぎたりしますが、また仮に話が全く理解できないとしても本人の話を否定しないようにしましょう。不安を訴えている時は「どうして、そんなばかばかしいことを考えるの?」「気にしなければよい」などの助言はせずに聞き役に回り、むしろ「私はあなたの味方」というメッセージことを伝えることが好ましく、そうしているうちに本人の気持ちは徐々に落ち着きます。
また、このような疾患をもつ方のご家族の中には、真剣に心配している家族ほど「本人を追いつめてしまったのは自分かもしれない」「遺伝のせい」「育て方が悪かった」と思われる方もいますが、そのようなことを考えずに、落ち着いて本人に寄り添ってください。

専門の医療機関へ

そうして本人が落ち着いたところで、専門の医療機関への受診を考えます。日常生活で今までできていたことができなくなったり、仕事などの社会生活のうえで支障が生じてきたり、度を越して心配性な場面が見られたりしたら、精神科への受診を勧めてください。できれば、通院にも同行して、家での様子や心配なことを医師に相談するとよいと思います。もし受診に対する抵抗があれば、かかりつけの内科などクリニックや近くの保健所などに相談し、それらの機関を経由して精神科や心療内科などへの受診を提案してもらう方法もあります。

無理な要求には歯止めをかけ、少し距離をおく

本人が強迫性障害(不安障害のひとつ)などの場合は、家族や身近な人に確認行為を強要する場合もあります。これらの行為について、家族がどこまで受け入れたらよいかと悩まれることがありますが、常識的な時間や程度で切り上げて良いと思います。「私はこれくらいでよいと思う」などと伝えればよいです。
また、ときには家族が本人と少し距離をおくというのも必要でしょう。熱心な家族は何とか症状を良くしようとするあまり過干渉になることが少なくはありません。慢性化しやすい精神疾患の場合は家族がかかわり過ぎても思うほどに変化が現れないため、家族のほうがストレスを抱えてしまいます。その結果、家族が本人に対し批判的になったり怒ったりすることで、本人に自信を失わせ症状が悪化するという悪循環につながる場合もあります。ですから、干渉しすぎず、少し距離をおいて見守ることも大切です。
就労経験がある不安障害の方に対して、家族や身近な人が「早く働いてほしい」気持ちをもっていたとしても、早期の就職や復職を勧めることは控えてください。本人の症状が落ち着き、不安との上手な付き合い方ができるようになるまで温かく見守り待つことが大切です。

不安障害の方の就労について

就職にあたって

不安障害の方が就職については、本人の希望する内容をよく聞いたうえで「不安障害に至った経緯」を振り返り、本人だけはなく、家族や支援者などと話し合いながら進めていくのがよいと思います。仕事内容、人間関係、通勤など本人がもつ不安要素を確認し、それらへの対処法も併せて検討しながら就職活動を行ってください。
その際に職場は不安障害であることを開示できる環境が好ましいです。強いストレスを感じているときに、それをすぐに上司や周囲の人に伝えられる環境が望ましいでしょう。

就労を継続するために

最も大切なことは、自己判断で治療をやめることなく、治療を継続することです。そのためには職場の理解が必要です。不安障害の方は、長時間労働や大小さまざまなストレスで不安が生じます。治療中であることやどういう不安が生じやすいかなどを事前に職場に伝え、周囲の人のサポートを受けながら不安が過剰に大きくならないようにしてください。

復職と職場の対応について

同じ職場への復帰であれば、復帰当初は仕事量を減らすとか、出勤日数や時間を減らすなどして、徐々に復帰前の状態に戻していくことが原則です。もしくは、職場を変えてもらうという方法もあります。よく復帰とは以前と同じように仕事をこなすと考える人が多いのですが、特に過重労働が原因で発症したケースの場合などは、心的もしくは肉体的な過度の負荷はないかどうか仕事内容について充分に再検討する必要があります。
また、いうまでもなく、上司や同僚の「心の病気」への理解があり、いつでも病気のことを相談できるような職場の雰囲気づくりなどが重要となります。

自立支援医療について

精神疾患で通院するの場合、「自立支援医療」という医療費助成を受けられる場合があります。その他にも、経済的支援の受け方、訪問看護サービスや、精神障害者の日中活動、住まいの支援など制度・仕組みがありますので、詳しくは近くの保健所や通院中の精神科病院の地域医療連携室もしくは医療福祉相談室などで精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー)へおたずねになるとよいでしょう。