お庭に立派な渋柿のある訪問先のお宅でのこと
その方(訪問看護ご利用者)を訪問したら、いつも前半のお時間は日常生活の中で気になったことや楽しかったことなどお話しながら、後半はご趣味のウクレレ演奏を一緒にしています。今年も実がたわわな柿の木を眺めながら過ごしていると、その方が「毎年お友達が採ってくれてたんですけどね、、、コロナ渦で会えなくて去年も一つも採れないまま、、、熟れてカラスのえさになっただけ」と呟かれました。
「それはもったいない!」と、早速私はお手伝いを申し出ました。それからは、収穫の頃合いはいつか、天気は持つのか、必要な道具は、、、など、その柿の木を眺めながら一緒に計画。収穫当日は同僚の男性看護師や作業療法士にも手伝ってもらい、「あそこらへん採れそうよ」「あー、くれぐれも気を付けてー」など声をかけ合いながら、高枝切狭で枝ごと実を切り落とし、落下する柿を特製虫取り網でキャッチ。採れた柿は、干し柿用に枝を残して切る。「まあ、いい色。これこそ柿色ね」などと言いながら。目標20個と開始しましたが、大奮闘の結果、なんと60個近くの収穫。その方は「来年もよろしくお願いします」と、笑っておられました。翌週にそのお宅を訪ねると、趣ある縁側に柿が吊るされおり、「おいしく出来るといいけど」とおだやかな笑顔で眺めていらっしゃいました。
男性の利用者さんのお宅での干し柿作り
山育ちのその方(訪問看護ご利用者、上述と別の方)が、随分昔に渋柿を口にして大変な思いをしたことがあると笑っていたのを思い出し、干し柿づくりを提案すると「いいですねー」と即答されました。包丁を上手に使いこなすその方は、少年の頃は肥後守(「ひごのかみ」という小刀)を持ち歩き、枝を切って秘密基地を作ったり、サトウキビ畑からサトウキビを拝借したりしたこと(ごめんなさい。時効ということでお許しを)など、懐かしみながら語ってくれました。とても豊かな少年時代のお話、私もその頃の様子に思いを馳せながら聴き入っていました。
訪問リハビリ(作業療法)は、ご自宅に伺わせていただき、いろんな作業を通して今この瞬間と自分を大切にしていく時間です。過去があって今があり、そして未来への可能性を感じれる時間にしたいと思っています。作業を共にし、共に感じ、これからもそんな時間を皆さんと過ごしていきたいと思います。
[ご参考]
リハビリテーションとしての作業療法について
作業療法の「作業」とは、日常生活におけるすべての行為を指します。食べること、遊ぶこと、寝ることなど何でも「作業」という考え方です。私たち訪問作業療法士は、さまざまな「作業」をとおして治療的なアプローチを行い、その方らしい幸福度の高い生活が送れることをめざしています。
訪問作業療法士